全国の商工会・商工会議所や公的な支援機関、金融機関では様々な経営に関するセミナーを開催しています。
ノウハウや知見を持った方の話ですので、非常にためになるものもあります。
ぜひともご活用されてはいかがでしょうか。
しかし、そういったセミナーもただ聞きに行けばよいというものではありません。
経営に関するセミナーを受講するにあたっての留意点をいくつかご紹介します。
Table of Contents
他社の成功事例を生かすことができるか
成功事例はセミナーの題材として非常に人気があります。
自社に取り入れられることを求めて、他社の成功事例を聞きにいくというケースも多いのではないでしょうか。
しかし、他社の成功事例そのものや、成功に至った具体的な方法を聞いてもそれ自体はあまり自社に生かせるものではありません。
なぜなら、他社の正解は、条件が異なる自社にとって正解ではないからです。
同じことをしても同様の成果を得ることができるとは限りません。
平戸藩主だった松浦静山(1760~1841)の「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。
成功要因には、必然のことだけではなく、偶然……松浦静山のいう不思議というファクターも含まれます。
話し手も成功事例を話すにあたって、偶然にうまくいったことは話しづらいでしょうし、本人も偶然うまくいっただけであることに気づいていないのであれば、偶然だっただけだと話しようがないでしょう。
成功事例を聞くこと自体は悪い事ではありませんが、手法を学ぶつもりで成功事例を聞いても得るものは少ないでしょう。
今必要か
DX、AIのような先端かつ高度な技術の導入方法をはじめとして、ノウハウ、TIPS系のセミナーは人気のコンテンツの一つです。
公的機関のセミナーは当然セミナーを企画している担当者がいます。
担当者の立場では、参加者に受けるセミナーがしたい訳です。
そのため、どうしてもキャッチーな内容にしなくていけないという主催者側の事情があります。
必然的に、誰もが気になっていて、聞きに行っても悪くはなさそうな内容のものが多くなりがちです。
しかし、ノウハウはあくまでも課題を達成するための手段です。
今現在自社が抱える課題を達成するのに役立たないのであれば、単に知らない知識を得て、知的好奇心を満たす以上の効果はありません。
言い換えると、セミナーを受ける時間と手間が無意味なものになりかねません。
「いつか必要になるなもしれないから」というのであれば、必要になったタイミングでセミナーを受講する、あるいは専門家であるセミナー講師にサポートを依頼すれば良いのではないでしょうか。
内容は求めるレベルに合っているか
セミナーの内容が自社が求めるレベルに合っていなければ、セミナーを受けること自体が無駄になります。
特に公的機関で行われるセミナーは知識のない人を対象としたものがほとんどです。
公的な事業としてセミナーを行っている以上、やはり圧倒的に数が多いのは知識がない方ですので、知識がない方に向けた内容にする必要があるのでしょう。
内容が高度になるほど、それぞれの会社の事情に合わせた内容にする必要があります。
しかし、話し手は参加者の詳細が分からない中で内容を決め、資料を作成します。
そもそも、不特定多数の人を対象にして話すセミナーという形式が、個々の聞き手に応じた細やかな情報を伝える目的にはそぐわない方法です。
また、公的機関でのセミナー、特に無料、あるいは数千円の安価なセミナーは、民間主催のセミナーと比較して参加の敷居が低くするために安価にしているということもあります。
そのため、より突っ込んだ高度な内容のセミナーを行うということは考えづらいことです。
セミナーを受講する目的は何か
様々な説がありますが、セミナーを受けて実際に行動する人自体が受講者全体の5%程度といった意見もあります。
セミナーを受けること自体は決して悪い事ではありませんが、自社の課題達成のために行動しなければ受けたこと自体が無駄になります。
受講したその時の満足感のためにセミナージプシーになったり、何も実行しないでアンケートに感想を書くだけのセミナー評論家になったりしている方は時間を浪費していることにもなりかねません。
あくまでもセミナーは自社の課題を達成するための手段であって、セミナーの受講よりも妥当な手段があればそちらを選択すべきですし、セミナーの受講そのものが目的になっていたら本末転倒です。
最後に
世の中には多くの専門家がいます。 その専門家のノウハウを得られるという点ではセミナーは有用です。
ただ、興味を持ったセミナーを受講すればよいという訳ではありませんし、目的を持った受講でないと価値がありません。
各種セミナーを上手く活用して経営に生かしていただければと思います。
以上、参考になれば幸いです。