ダチョウの平和

ダチョウは危機が迫ると頭だけを地面に隠してやり過ごそうとする習性があるとされ、そのことから都合の悪い現実を見ないようにする慣用句としてダチョウの平和という言葉があります。

経営においては都合の悪い現実を無視したところで自社の状況が悪くなるだけですので、勇気をもって現実と向き合う必要があります。

しかし、自社にとって都合の悪い事実を無視する、あるいは事実に気づきながら何も対策をしない理由はいくつかあります。

正常性バイアス

実際には、ダチョウには危機に対して頭を地面の中に隠すという習性はないそうです。
しかし、都合の悪い現実から目をそらそうというのは人間の心理としてよく見られることではないでしょうか。

自分にとって都合の悪い情報を無視する、あるいは過小評価することを心理学では正常性バイアスと呼んでいます。

AIの発展は目覚ましく、ホワイトカラーの仕事は特にAIの影響を受けると言われています。

例えば、定型の特に手続き業務が多い士業は、仕事の8~9割以上がAIによって失われるという記事が2017年に日経新聞の記事として掲載されたことはご存じの方も多いでしょう。

これに対して、この業務はAIではできないから大丈夫だといった記事もネット上で散見されます。

AIによって代替される業務が、全体の8~9割に及ぶとされている訳ですので、AIに奪われない業務が1~2割しかなければ、8~9割の人達は不要です。
大丈夫なわけがありません。

なお、士業の場合は国から与えられた独占業務をやっているだけで、自分で商品を作っている人はほとんどいません。
つまり、いざAIによって仕事が減ると、うまく立ち回っていく、あるいは逆にAIをうまく活用して収益を上げるといったことは難しいでしょう。

何も士業に限った話ではなく、AIによって仕事が失われる、あるいは何らかの影響を受ける職種・業種であれば、今から対策を取っていく必要があります。

下請けの業務をやっていればよかった

我が国は、重工業~軽工業まで工業が発展した国です。
最終製品メーカーが原料から完成品に至るまでの全ての工程の加を工するわけではなく、効率化、コストカットのために一般的には下請けや外注を利用しています。

ただ、元請けに言われたものだけを作っていたら儲かっていたのは、高度経済成長期のような需要が供給を上回っていて、市場がどんどん拡大していた時代の話です。
つまり、依頼された業務さえやっていれば良かった時代は数十年前に終わっていたということです。

1980年代から中国が積極的に外国の企業・工場の進出を受け入れはじめ、国内の大手メーカーも人件費をカットするために中国に生産拠点を移し始めました。
その結果、中国に生産拠点を移す大手メーカーについていけない企業は、ロットが小さい、納期が早いために国内でしか作れない案件、つまり収益が低い案件が多くなってしまいました。

完成品メーカーが生産拠点を海外に移し始めたという大きな環境変化に対して、なんらかの対応や対策が必要でした。

現状の受注状況はいかがでしょうか。
同じことを今後5年、10年続けたとして、収益は向上するでしょうか。

改めてそう問われたら「確かにこのままでは…」と答える経営者様も多いと考えられますが、具体的に何をどうするのかとなると、考えていなかったというのが現実ではないでしょうか。

経営環境が変わっているのは現実です。
現実を踏まえ、新たな方向性を今のうちに考え、実行しなくてはいけないのではないでしょうか。

経験で判断する

本に書いてある知識を振りかざして企業の経営はできませんが、過去の経験だけでも経営はできません。
前述しましたが、需要が供給を上回っていた時代は終わってしまったため、その時代の経験や常識は過去のものになっています。

しかし、このやり方でやってきた、今後も変えるつもりはないと考えているケースは多いだろうと考えられます。

我が国においては人口減少、少子高齢化という過去に誰も経験をしたことがない時代に突入し、経営環境、事業環境を大きく変えるAIの普及が急激に進んでいます。
そのため、現在の経験すら数年後には役に立たなくなるかもしれません。

知識よりも経験を重んじることが重要であるような意見もありますし、一定の説得力があるかもしれませんが、経験が役に立たない時代においては、特に知識よりも経験が重要だとは言えません。

経験にのみ頼るのではなく、新しい知識を得ながら、経験と知識を生かして考えることが求められます。

最後に

国内大手自動車メーカーの不正が発覚した件は記憶に新しいかもしれません。
こういったことになれば、自社になんの責任や過失もないのに仕事がなくなることもありえます。

経営環境が変わる中において、現状から目をそらさずに考え続けることが求められます。

以上、参考になれば幸いです。

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