一道に携はる人、あらぬ道の筵に臨みて

徒然草の一節に「一道に携はる人、あらぬ道の筵に臨みて、『あはれ。わが道ならましかば、かくよそに見はべらじものを。』と言ひ、心にも思へること、常のことなれど、よに悪くおぼゆるなり。」というものがあります。

意味は、「とある分野の専門家が、自分の専門外の分野の会合などに出席して、『ああ、これが私の専門だったら、こんな風に傍観してはいないのに』 と言ったり、心の中で思ったりするのは世の常ではあるが、非常に良くない。」となるでしょうか。

このように、専門家が自分の専門外のことについて、さも正しいかのように見当違いな意見を述べるというのは、ビジネスにおいても見られることです。

万能感

心理学用語で万能感というものがあります。
その名の通り、「自分は何でもできる」と思う心理のことで、成長と共に薄れていくものです。

今年は、元日から大きな災害が発生し、多くの被災された方々が大変な思いをしていらっしゃいます。
自衛隊も出動し、救助や復旧作業に尽力されています。

それに対して、有名人がX(旧Twitter)で、地震における自衛隊や政府の対応についてクレームめいた投稿をしたり、なぜこうしないのかといった意見を投稿しています。

当たり前ですが、素人意見ですので頓珍漢な意見が多く、コミュニティノートがつけられているようなケースが多々あります。

このように、自分の専門領域外のことで、知識や経験がないのに見当違いの意見を言う人がいます。
専門領域についての自信が、専門外のことについても自分は正しいとすり替わっているのでしょう。

ダニング=クルーガー効果

例えば、プロ野球選手は野球のスキルが高いですが、自分は野球がうまいからといって外科手術のことや物理学のことについて知っているとは思わないでしょう。
当然ですが、とある分野の専門家は、専門外のことに関しては素人です。

知識がないことについて、さも自分の意見が正しいかのように意見をするというのは心理学でダニング=クルーガー効果と呼ばれています。

ダニング=クルーガー効果についての詳細は過去の記事を参照いただくとして、専門外のことに関しては、全体が分からないために自分がどれだけ知識がないのかということが分かっていないというのが一般的でしょう。

専門家も専門外は素人

専門外のことに見当違いな意見を言う人には共通点があると考えられます。
それは、(専門家としての)スキルが高いと自認していることです。

自分は(自分の専門領域において)仕事ができると自認している人は、当然ながら他者よりも自信があり、会社に貢献している意識もあるでしょう。
だから、専門外のことであっても自分の考えは正しいと、非論理的な結論に至ってしまうということです。

こういった人は、決して万能感が薄れていない、幼児性が強いということではないと考えらえます。

しかし、置かれている立場的に自分をたしなめる人が少ないので、勘違いが正されないという点で万能感の強い子供と同じような状態にあるからかもしれません。

最後に

従業員の方なら、上司がたしなめればすみますが、外部の専門家であればお付き合いを見直すことが良いかもしれません。
なぜなら、相手を変えることなんかできないからです。

間違っても別のカテゴリの専門家なのだから、専門外でも適切なことが言えるのだろうとハロー効果に陥らないようにしなければいけません。

以上、参考になれば幸いです。

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