数字の管理

2019年11月末に、中国の湖北省武漢で新型コロナウイルス(COVID-19)の発症者が確認されて以来、瞬く間に世界中に広がりました。
マスクや消毒液が品薄になるといったことがありましたが、コロナ禍において売上を上げた企業も多々あろうかと思われます。
しかし、多くの企業は自粛要請や外出が減ったといったことが原因で、売上が下がってしまったのではないでしょうか。

売上の減少といっても、客数が減ったことによるものなのか、あるいは客単価が下がってしまったことによるものなのかといった、様々な原因があります。
原因を特定できないと、明確な打ち手を検討することはできないはずです。

コロナ禍に限らず、経営を行う中では様々な数字を管理する必要があります。
その中でも、今回は特に売上に関係する数字をいくつかご紹介いたしますので、参考にしていただけますと幸いです。

なお、管理すべき数字は業種や企業によって異なる可能性がありますことをお断りしておきます。

売上に関わるもの

顧客数

その名前の通り、顧客の数です。
顧客リスト、顧客カルテといった形で管理されている事業者様も多いのではないでしょうか。

現在の顧客数=既存顧客+新規顧客-流出顧客

となりますので、既存顧客をいかに維持するか、新規顧客をいかに獲得していくかが重要と言えます。

消費者向け事業の場合、一年間を通じて一定ということはまずないと考えられます。
月ごとの変化、曜日ごとの変化、気温の変化との関係といった、客数に影響を与える要因も併せて取得することで、管理の精度も高まるでしょう。

客単価

一顧客の一回の取引当たりの売上です。
システムインテグレーターや美容院といった労働集約型の事業にとって、客単価は特に意識する必要があります。

例えば、飲食店であれば同じメニューを1人前作るのと、2人前作るのとでは売上は2倍ですが、工数はほとんど変わらないでしょう。
しかし、美容院で1人の顧客の髪を切ることに対して、2人の顧客の髪を切ることを比べると、売上は確かに2倍なのですが、工数も2倍です。

つまり、対応する顧客数と工数が比例する企業の場合は利益を増やすためには効率を鑑みて、顧客数を増やすだけではなく、客単価も増やすことを意識する必要があるということになります。

顧客維持期間

既存顧客の維持よりも、新規顧客の開拓の方が費用が多くなるということは、日々の営業活動において実感されているのではないでしょうか。
既存顧客がどれだけ顧客でいてくれているのか、その期間を把握した方が、適切なプロモーション活動(内容・コスト)に反映しやすくなります。

可能であれば、期間だけでなく、顧客を止める(止めた)理由も併せて把握することが望ましいです。
実際に会員制のサービスを行っている事業者様で、退会処理を行うに当たって退会理由をアンケートされている事業者様もあります。
消費者向けの小売業のように、期間の把握や顧客でなくなった理由の把握が難しい企業もありますが、何らかの工夫はできないでしょうか。

費用に関わるもの

顧客獲得費用

一度顧客になっていただいたとしても、恒久的に顧客でいるわけではありません。
したがって、ほとんどの企業は常に新規顧客の開拓が求められるはずです。
しかし、新規顧客獲得にかけられるコストも際限があります。

いくらが妥当なのか、目標値を設定するためにも、現状を把握する必要があります。
データとしての精度を高めるために、顧客の属性(規模、業種など)や提供する商品といったことも併せて取得する必要があるでしょう。

顧客維持費用

既存顧客の維持期間だけでなく、維持にかかるコストも把握しておきたいところです。

例えば、製作会社であれば、Webサイトの管理業務も毎月一定の額で請けている企業もあるでしょう。
額面は変わらないのに、顧客からの要求が厳しくなって、その分の工数がかかってしまうといったことは日常茶飯事だと考えられます。

基本的に顧客の要求は、契約期間の長さに応じてエスカレートすることはあっても、緩やかになることは考えられません。
既存顧客への対応に一定以上の工数(費用)がかかるようになると契約内容や、契約そのものを見直す検討も必要になるでしょう。

そうった判断を行うためにも、顧客の維持にかかっている費用を把握する必要があります。

最後に

数字は経営判断の根拠として、あるいは業務の改善において重要な要素です。
なんとなくで判断を行うといったことや、とにかく売上を上げるように頑張るといったことではなく、明確な数字の根拠に基づいた方が達成の確度も向上するでしょう。

売上と費用に係る数字を5つ紹介させていただきましたが、経営をするにあたって管理すべき数字はこれだけではありません。
製造業であれば商品ごとの原価や生産リードタイム、在庫数、サービス業であれば顧客満足度やサービス提供のリードタイムといった管理すべき数字は他にもたくさんあります。
原価や在庫は費用に関わるもの、生産リードタイム、サービス提供のリードタイム、顧客満足度は価値創造に関わるものといった分類の仕方ができそうです(もちろん、他の分類の仕方もあります)。

もし、数字の管理をあまりされていらっしゃらないということであれば、どういった数字を管理すべきか検討し、特に重点的なものからいくつか管理されてはいかがでしょうか。

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