本来の目的を見失っていないか

収益向上のために人件費をはじめとしたコストカットの結果、競争力を失って衰退するというのは、よくある話です。

例えば、世界ではじめて自動車の大量生産を実現し、GM、クライスラーと並んでビッグ3よ呼ばれたフォードは、2000年代前半に収益性の改善のために大規模なコスト削減を実施しました。

低コスト部品の使用、開発費の削減、一部工場を閉鎖といったことをしましたが、品質の低下や新車のモデルチェンジの遅延につながり、競争力を失った結果、他のメーカーにシェアを奪われることになってしまいました。

このように、本質や本来の目的から視点が外れ、目に見える部分ばかりに目が行ってしまうことは、企業の経営においてもよく見られます。

それは結局儲かるのか

設備投資、人材育成、IT導入など、企業が何かの施策を行うのは何のためでしょうか。
事業承継や事業売却など、一部例外はありますが、基本的に儲けを増やすために行います。

本業の儲けは営業利益ですから、営業利益が上がらなければ、実施した施策は無駄です。

設備導入で補助金申請を検討されている企業もあるでしょうが、中には補助金に採択されなければ事業を行わないという企業もあります。

それはつまり、儲かる事業ではないということですよね。
だとしたら補助金に採択されたとしても、事業実施の結果は結局儲からないということになります。

また、補助金の申請にあたって代書業者を探すといったこともあるでしょう。
実際に、補助金代書専門と名乗るような業者もたくさんあります。

Webサイトでの売り文句はどのようなものでしょうか。
「採択率○%」「○円分の採択実績」といったような文句が並んでいるかもしれません。
その中で、クライアントがいくら儲かったということを売りにしている業者は皆無でしょう。

繰り返しますが、営業利益が上がらなければ、補助金に採択されても意味がありません。
そして、肝心の営業利益が上がったことを実績として謳っていないということは、代書業者自体も採択されることをゴールだと思っている可能性が高いでしょう。

いずれにしても、儲かる事業計画があって、タイミングが合えば補助金に申請するのは、うまく制度を活用していると言えるでしょう。
しかし、営業利益を上げなくてはいけないという前提を飛ばして、目先の補助金の採択しか見ておらず、肝心の利益の向上に目が行っていないのは、まさに本来の目的を見失った例と言えるでしょう。

失注を恐れて経営が苦しく

在庫は「罪子」といった言い方をすることがあります。
基本的に理想の在庫量はゼロ、仕入れは売れる分と一致することが理想です。

とはいえ、在庫をゼロするというのは実際には現実的ではありませんし、小売店の場合は店頭に並べられた商品(=在庫)が豊富だからこそ、顧客が来るといったこともあります。

しかし、どのような事業であれ、過剰な在庫は経営にとってはマイナスです。
失注を恐れて在庫が過剰になると、仕入れコスト、在庫管理コストや保管コストの増加につながります。
その結果、きゃしゅフローの悪化を招き、経営が苦しくなるということはよくある話です。

食料品のように痛んだり腐ったりするために保管期限があるものや、アパレル商品のように流行り廃りがあって、売り損なうと売れなくなる商品の場合、売れずに廃棄してしまうと仕入れにかかった費用が全て無駄になります。

儲け損ねないように在庫を増やした結果、却って経営が苦しくなってしまったという、本末転倒な結果になってしまうのは、まさに本来の目的を見失った結果だと言えるでしょう。

顧客の言うことを聞くのが仕事か

たいていの顧客は、商品やサービスを提供する側よりも商品・サービスに関する知識で劣っています。
その顧客の言うことを聞いて、顧客にとって最適な商品・サービスを提供できるのでしょうか。

顧客の要望を聞いてしまったらおかしくなってしまうというのは、デザインの受託制作ではよくある話ではないでしょうか。
顧客の要望を聞いたものを制作し、それで顧客にとって望ましい結果にならなかったとしても、プロとして顧客のせいにはできません。

「この部分を赤くしてほしい」という要望があって、それが明らかにおかしい場合には、「赤くするのもいいですが、白くするのも良いですよ。でも、青くするともっと良いですよ。」というのが仕事のはずです。

目先の要望に応えることばかりに目が行って、本来得る必要のある成果を得られなくなってしまったら、まさに本末転倒です。

そもそも、知識の乏しい側が、適切にオーダーすることができるのかという点を考慮しなくてはいけません。
また、過去に『言語化できる範囲』でお伝えしたように、人は伝えるべきことを全て正確に言語化することはできません。

そのため、相手の言ったことをそのまま受け取ると、相手の要望の一部しか引き出せていないことになります。
それに対して100%応えたところで、相手の要望を満たすことはできません。

デザイン制作を依頼する顧客のオーダーは、制作物で直接的あるいは間接的に売上を上げてほしいのはずであって、自分の好みのものを作ってほしいでも、要望通りのものを作ってほしいでもありません。

最終目的を忘れて、目先の要望に応えようとするのは、まさに本来の目的を見失った例と言えるでしょう。

最後に

経営において本来の目的から視点がずれて、目先のことしか見ていないといったことはないでしょうか。

本来の目的を明確に、最終的に目的を達成できるか、この視点を忘れないことで、目先の些事に惑わされることなく、最終的な成果を得られる経営判断が可能になるでしょう。
その結果、企業の成長につながるはずです。

以上、参考になれば幸いです。

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