油絵の書き方をご存知でしょうか?
白いキャンバスにリンゴを描く場合、いきなりリンゴの色で塗るのではなく、実際の色ではない色から塗り始めて、色を重ねながら描きたい色にしていくのが一般的です。
その方が、最終的に塗る色で直接塗るよりも、色の深みが出るからです。
企業の経営にも同じことが言えます。
事業や業務に関する直接的な知識や技術だけでなく、それらに深みを加える関連する知識や技術があれば、より提供する価値が向上します。
Table of Contents
専門知識はみんな持っている
どのような業種であれ、専門のスキルや知識を使用して業務を行います。
スキルや知識の中でも、他には真似のできない特殊なスキルを備えていたら、競合との競争に勝ち抜くことができる、あるいはそもそも競争をしないですむかもしれません。
製造業ではそういった職人を抱えている、あるいは技術力を備えているオンリーワン企業というのが散見されますが、他の業種ではいかがでしょうか?
特に、今後も拡大が期待されるIT分野においては、むしろ技術的にはコモディティ化している業界です。
もちろん、専門知識や技術を備えていますが、では競合に同じことはできないかと言われると、決してそんなことはない企業が多いのではないでしょうか。
IT業界だけでなく、顧客のオーダーに応えるタイプの企業の場合は、顧客のオーダーに応えるための知識やスキルを誰もが備えようとするため、よりコモディティ化しやすい業界です。
「+」と「×」
業務に必要な知識やノウハウだけではコモディティ化が避けられないのであれば、他の知識を足す、掛けるということが考えられます。
ただ、これらは似て非なるものです。
他の知識を足す
Aという業務に加えて、Bという業務もできるようになるというクロスセル的な考え方です。
例えば、システム会社がWebの制作もできるようになることで、ワンストップで受注できるようになるといったことが考えられます。
ただし、時間単価が上がる訳ではないので、労働集約型の業種だと売上の向上に伴って業務量も増えることになります。
他の知識を掛ける
Aという業務の付加価値を上げるというアップセル的な考え方です。
例えば、システム会社が在庫削減の知識を得ることで、単なる在庫管理システムが、在庫管理を通じた顧客のキャッシュフロー改善のシステムに変わります。
提供する価値の向上に伴って、販売価格も向上させることができますので、時間単価の向上が期待できます。
どういったスキルや知識を得るべきか
結論からいうと、顧客の要望をより高いレベルで叶えるために必要なスキルや知識です。
引き続きシステム会社で例えると、在庫管理システムの構築を依頼されたとしましょう。
顧客はシステム自体が欲しい訳ではなく、在庫の管理自体をしたい訳でもありません。
在庫の最適化をしてキャッシュフローの改善をしたいから在庫の管理をしたい訳です。
そのため、品目の数を管理できるシステムを作るだけでは顧客の要望を果たしていません。
例えば、ABC分析、在庫回転期間、在庫回転率の分析などができるシステムであれば、より顧客の要望に応えることができるでしょう。
そのためには、単にプログラミングのスキル、データベースの知識といったものを高めるということではないことがお分かりいただけるかと思います。
最後に
油絵の色の深みで例えましたが、表面に見えていないスキルや知識は模倣されにくいというメリットがあります。
仮に、新たなスキルや知識を掛け合わせて付加価値を高めたとしても、模倣されてしまっては優位性の維持はできません。
しかし、表に見えづらいものであれば、その分模倣されづらく、結果としてコモディティ化しづらいという訳です。
以上、参考になれば幸いです。