第4次産業革命時代の士業

第4次産業革命によって、様々な職業、業種が今後ますます影響を受けるでしょう。
それは資格業である士業も例外ではありません。

第4次産業革命時代において、士業はどのような影響を受け、どのように対応すべきでしょうか。

第4次産業革命とは

第4次産業革命によって士業がどのような影響を受けるのかの前に、第1次から第4次産業革命までの変化を見ていきましょう。

第1次産業革命

18世紀後半にイギリスで起こった動きで、手工業から機械工業への移行しました。
蒸気機関の発明や綿織物工場の自動化などが進み、生産性が向上しました。

第2次産業革命

19世紀末から20世紀初頭にかけて、電力や石油などのエネルギー源を利用した大量生産が始まりました。
自動車や電話などの製品が登場し、インフラも整備されることで生活が変わりました。

第3次産業革命

1970年代から始まった情報技術の発展によって、コンピューターの活用が進みました。
インターネットや携帯電話などの普及により、情報通信技術が急速に進化しました。

第4次産業革命

AI、ビッグデータ、IoT、自動運転、ロボット工学、クラウドコンピューティング、ブロックチェーンなどのテクノロジーによって自動化や効率化が進展します。
効率的な生産やサービス提供の向上、新たなビジネスモデルの創出、雇用環境の変化など、様々な産業や業界に変革をもたらすとされています。

第1次産業革命から第3次産業革命まで企業の生産性の向上と、それに伴う生活様式の大幅な発展をもたらしてきていることが分かります。
第4次産業革命においても、同様であることが予想されます。

第4次産業革命の士業への影響

さて、情報技術のさらなる進化と発展である第4次産業革命によって、士業はどのような影響を受けるでしょうか。
代表的なものをいくつか挙げてみます。

一部の業務がなくなる

形式の決まった書類の作成、手続き、仕訳といった単純作業は、AIを始めとした技術の発展によって自動化されたり、誰でも簡単に行うことができるようになるため、士業に依頼しなくなる可能性が非常に高いことが予想されます。

相談業務が減少する

法律に照らし合わせて、違反しているのか、していないのかといったように、是非を回答できるようなことはAIで解決できる領域です。
現在は精度が低かったとしても、精度の向上は時間の問題です。

労基法に特化したAI、制度会計に特化したAIといったように、専門知識について学習させたAIも今後登場するでしょう。
そういったサービスを使用すれば、わざわざ専門家に相談しなくてもオンラインで解決できるようになります。

変化のスピードに法律が追い付かない

技術の発展によって失われるビジネスもあれば、新たに登場するビジネスもあります。

しかし、法律が新たに生まれるビジネスに対して先に対応することはできません。
新たなビジネスに関する問い合わせに対して、専門家として明確な回答ができなくなる可能性があります。

士業はどうするべきか

第4次産業革命の大小様々な影響に対して、士業はどのように対応すべきでしょうか。
まず考えなくてはいけないことは、環境の変化を受け入れることと、自身のポジションの見直し、そして自身の能力やノウハウを生かせる事業をゼロベースで考えることが必要でしょう。

環境の変化を受け入れる

AIによって仕事が失われるのは単純作業だけで、××という業務はAIが発展してもなくならないという意見もネット上ではよく目にします。

残った業務は、失った分を補填できるだけの需要があるのでしょうか。
補填できるだけの売上になるのでしょうか。

また、AIによって業務の一部しか残らないのであれば、市場は小さくなります。
小さくなった市場で、仕事の取り合いになる結果、全員は生き残れません。

AIに奪われない業務があるということそのものはあまり意味を成しませんし、現実に目を背けても全く意味がありません。
情報技術の発展によって確実に仕事は減ります。

まず、変化を受け入れて、客観的な状況の把握をすることで、正確なビジョンの設定や的確な判断ができるようになります。

自身のポジションの見直し

士業は先生だと思っていらっしゃる方も多いでしょう。
そういった認識の方は今後生き残っていくのは難しいでしょう。

ほとんどの士業は、今現在の時点でも先生ではありません。
なぜなら単なる作業代行業だからです。

代わりに書類を作ってしかるべきところに提出する、それにあたって相応の知識が必要なことは理解できますが、それは情報技術によって価値が下がってしまいます。

知識やノウハウを活用して顧客の代わりに何かをするのは士業だけではありません。
例えば、車を買ったら販売店の方が書類を作って関係機関で手続きをしてくれるという点は一部の士業と同じですが、自分は先生だ、偉い、などとは考えてはいないでしょう。

同様の作業を代わりに行うサービスの方々と同じ、自分もサービス業の1つであるという認識でいなければ、ますます買い手との認識がずれていくでしょう。

事業をゼロベースで考える

士業としての諸々の業務は、国から独占業務として与えられたものであって、自分で考えた商品ではありません。
実際、○○士だから××という業務をするという風にやっているだけの方がほとんどではないでしょうか。

今までそうやってきた中で、事業をゼロベースで考えろといっても難しいでしょう。
ですが、変わらないければ生き残れません。

○○士だからではなく、△△の知識をどのように生かせるかということを、世の中の流れ、市場の状況と併せて検討されてはいかがでしょうか。

例えば、他の人ができない、やらない領域に特化することでオンリーワンになるといったことが分かりやすいでしょう。

その他、ゼロベースということであれば、前述したように専門性の高いAIの出現は高い確率で起こりえますので、そういったAIを開発している企業への就職、外部のパートナーとして協力、あるいは自分で作るということも考えられます。

そうなったらもはや○○士ではないとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、士業はいつ、いかなる時代においても存続できるという保証はありません。

安易にコンサルティングをすれば良いという考えは危険

AIによって手続きや単純作業を失う分、コンサルティングを行うといった意見もネット上では散見されます。

コンサルティングというのが具体的に何を指しているのかは不明ですが、同じ資格を持った人間が全国に何万人もいて、同じようにAIに仕事を奪われる人間も同じだけ存在していて、何万人もの人間を賄えるほどコンサルティングの需要があるのかという点を考慮した上での意見とは考えづらいです。

また、士業の強みは専門的な知識です。
ですが、情報技術の発展によって作業がなくなるだけでなく、知識のギャップにも価値がなくなってきているという点を忘れてはいけません。
コンサルティングをするにあたっての専門知識が価値を失う中で、何をリソースとしてコンサルティングを行うのでしょうか。

最後に

士業とひとまとめにしましたが、AIを始めとした情報技術の発展によってによって仕事が失われる割合は、士業の種類によって異なります。
今回の記事は弁護士や中小企業診断士にはあまり関係ないかもしれません。

さて、「エストニア 士業」で検索すると、IT先進国であるエストニアの士業事情についての記事がたくさんヒットします。

日本とは諸々の条件が異なりますし、どこまで客観的で正確な情報なのかは分かりませんが、今後の士業の状況についての示唆が得られると思われますので、お時間がある時に色々とご覧になられてはいかがでしょうか。

以上、参考になれば幸いです。

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