経営を古典に学ぶ(論語)

論語や孫子のように、いまだ読み継がれてきた古典はたくさんあります。
人間の考え方や行動における原理原則は変わらないため、時代を問わず通じ、また役に立つからです。
当コラムでも、洋の東西を問わず、様々な古典から中小企業の経営において通じる原理原則を学んでいきたいと思います。

今回は、論語を取り上げます。

論語とは

論語は、中国の春秋時代の思想家、孔子とその弟子たちの言行録をまとめた書物です。
儒教の基本経典の一つとされており、道徳や政治、教育などに関する孔子の考え方が記されています。
論語は中国のみならず、周辺諸国の思想や文化に大きな影響を与えています。

特に以下の五常と呼ばれる徳を重んじています。

  • 仁…人を思いやること
  • 義…私利私欲にとらわれず、自分のなすべきことをすること
  • 礼…礼儀正しいこと
  • 智…物事の道理をわきまえること
  • 信…誠実であること、言行一致していること

孔子について

姓は孔、名は丘、字は仲尼といい、紀元前552年(または紀元前551年)に魯国(現在の山東省曲阜市)に生まれました。

孔子は3歳の時に父を、17歳の時に母を亡くしましたが、その後も勉強に励み、成人すると役人になりました。
その後は仕官をやめて他国へ行ったり、また仕官したりを繰り返しながら、多くの弟子を取って教育することに励みました。
諸国をめぐった後、最終的に生まれ故郷の魯に戻り、亡くなることになります。

弟子の数は生涯を通して3,000人以上といわれ、多くの優秀な才能を持った弟子を世に出しました。

人の己を知らざるを患えず、人を知らざるを患う

たとえ人が自分のことを理解していなくても気にしてはいけない。
むしろ、自分が他者を正しく理解できていないことを心配すべきである、といった意味になります。

人は誰でも自分のことを理解してほしいと思うものなのかもしれませんが、当然ながら他の人も同じように考えています。
自分のことを知ってほしい、理解してほしいと思うのであれば、まずは他人のことを知ろう、理解しようと努める必要があると言えます。

会社の経営に置き換えて考えると、従業員の方々が自分の考えを理解してくれないと嘆くのではなく、自身が従業員の方々に向き合って、従業員の方々のことを理解しようとしているか、ということになるでしょうか。

近き者説べば、 遠き者来る

自国の領民が喜ぶ統治をすれば、遠くの国の領民もうわさを聞いて集まってくる。 といった意味になります。

ES(従業員満足度)が高くなれば、必然的に従業員も集まりやすくなるでしょう。
CS(顧客満足度)が高くなれば、必然的に口コミで顧客が増えるでしょう。

これらのように、ステークホルダーの満足度を高めることで、プラスの成果を得ることができると考えられるでしょう。

その身正しければ、 令せずして行わる

為政者が、日頃から正しい行いをしていれば、命令しなくとも人々はちゃんとする。 という意味になります。

さらに「その身正しからざれば、 令すといえども従わず(正しい行いをしていなければ、誰も命令に従わない)」と続きます。

過去に「経営者がルールを破ると」というコラム記事を書いていますが、経営者や管理職の立ち振る舞いは、一般の従業員よりも周囲への影響が大きいです。

孔子より2,400年以上後の時代の山本五十六も「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」と述べています。
まずは自らが示すというのは時代を問わず必要なことなのでしょう。

人にして信無くんば、其の可なるを知らざるなり

人として信がなければ、何もならない。 といった意味になります。

事業をするにあたっては「信用」「信頼」が重要です。 信用、信頼していただいているから「信任」していただける、つまり買っていただけるということになるのでしょう。

他者の評価は、行動や言動に対してなされるものです。 そして、人の行動や言動は、その人の考え方や人の性根が具現化したものです。

態度だけを取り繕うのではなく、事業者として「信」に努めないと、行動や言動に信無きところが現れ、信用や信頼を損ねるのではないでしょうか。

仕えて優なれば則ち学ぶ、学びて優なれば則ち仕う

孔子本人ではなく弟子の子夏(姓は卜、名は商、字は子夏)の言葉です。
仕官して、ゆとりがあったら学問に励む。学問して、ゆとりが出来たら士官をする。 といった意味になります。

後半部分はともかく、前半部分はビジネスマンであれば誰にとっても大事なことです。

世の中のニーズ、技術トレンドなどは日々変わるため、事業において必要とされることもどんどん変わります。
事業内容や業務内容が変わらないとしても、今後のために何のインプットもする必要がないという人はいないでしょう。

最後に

渋沢栄一も『論語と算盤』にて道徳と経営は合一すべきであると述べています。
もし、論語に興味を持たれましたら、様々な本が出版されていますから、読んでみられてはいかがでしょうか。

以上、参考になれば幸いです。

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