経営学を考える(経営戦略の3つのレイヤー)

企業全体の方向性が外れていたら、どのような販促策を立案しても効果は薄いでしょう。
例えば、赤道直下の熱帯気候の国で防寒のコートを売っている時点で需要とマッチしていませんから、どのような販促手法を取るかということではないことはお分かりいただけるのではないでしょうか。

経営学では企業における戦略を、上位から「企業戦略(全社戦略)」「事業戦略」「機能戦略」の3つのレイヤーに分けて考えることが多いようです。
それぞれの戦略のレイヤーについては、以下の通りです。

企業戦略(全社戦略) 事業領域(ドメイン)の設定、成長の方向性の決定、経営資源の配分
事業戦略 事業ごとのドメインの設定、競争優位性の確立
機能戦略 組織・人事、マーケティング、開発、財務等の機能レベルの戦略

企業戦略(全社戦略)

企業戦略では、事業領域(ドメイン)の設定、成長の方向性の決定、経営資源の配分を行います。

事業領域とは「誰に(市場や顧客)」「何を(付加価値)」「どのように(手段・チャネル)」提供するかということです。経営理念や経営ビジョン、環境分析の結果に基づいて決定します。

事業領域が広すぎると、買い手から見てどんな企業なのか分かりづらくなります。
また、、経営資源が分散してしまってどの市場でも勝ちにくくなります。

逆に事業領域が狭すぎると、顧客ニーズが変わった時に適合していくことが難しくなり、成長の可能性も狭まります。

事業領域の定義には物理的な定義(モノ)と機能的な定義(コト)があります。例えば、フォトグラファーが「自分は顧客に対して写真を提供している(モノ)」と定義するか「人生の節目の思い出を残すお手伝いをしている(コト)」と定義するかということです。
全社と比較して後者の方がサービス内容に広がりが持てることが多いのですが、抽象的になりやすいのでターゲットとなる顧客や商品・サービスが不明瞭になる可能性があります。

事業領域が決まると成長するための方向性が決まります。
そして経営目標を達成するために経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)をどのように配分するかを決定します。

儲からない市場でどのような事業を展開するか、どのような製品を投入するかということを考えるよりも、儲かる市場をターゲットにする方が収益が高いことは想像に難くないでしょう。

つまり、企業戦略のピントが外れてしまっていたら、それ以降の頑張りは報われにくくなってしまいます。

事業戦略

複数の事業を行っている企業も多く存在しますが、事業ごとに達成すべき目標や必要な資源、外部環境等も異なります。
そのため、事業ごとにそれぞれ戦略を策定する必要があります。

経営資源の乏しい中小企業にとって、そもそも競争をしないことが望ましい状態です。
そのためには同業他社と差別化し、ニッチな市場でナンバーワン、オンリーワンの存在になるというのが理想です。

利益が見込める大きな市場に参入しても、激しい競争に巻き込まれてしまいます。
競合の多い市場において、大きな企業と競争をしても勝てません。

そのため、規模の大きい企業がやらないこと、できないことを検討する必要があります。
具体的には、より顧客に密着し、オンリーワンの高い付加価値を提供して単価を上げるというのが戦略の基本となるでしょう。

機能戦略

事業を行うに当たって必要な組織・人事、マーケティング、開発、財務等の各機能の戦略です。
ここで設定した戦略に基づいて具体的に実行していきます。

戦略の前提になっている経営資源や外部環境などは常に変化しています。
また、環境が変わらなくても計画通りに実行できないことも普通のことです。
プラン(Plan)通りに実行(Do)できないから、チェック(Check)して改善(Action)する訳です。

ですから、戦略を実行したら定期的に成果や効果を測定し、フィードバックして戦略の精度を高めるPDCAサイクルを回していきます。

最後に

現実問題として、商品・サービスをまず考案して、しかる後に諸々のことを検討するといったことは多いのではないでしょうか。
理想の形は、理念とビジョンに基づき会社全体の戦略を検討し、その後に事業戦略、機能戦略へと落とし込みます。

抽象度が高い状態からより具体的にしていくことで、企業全体の最適化を図りやすくなります。

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