孫子の謀攻編にある「彼を知り己を知れば百戦殆からず」の一遍はどなたもご存知であろうかと思われます。
この後、「彼れを知らずして己を知れば、一勝一負す。彼れを知らず己を知らざれば、戦う毎に必らず殆うし。」と続きます。
自身のことすら把握していなければ勝利はおぼつかないということですが、実際に、己(自社)の事をどれだけ把握しているでしょうか?
さて、2020年度版中小企業白書によると、現状を把握するのに際して部支援を受けておらず、感心もない企業における、外部支援を受けていない理由の1位は社内で十分に把握が可能だからと小規模事業者の38.6%、中規模事業者の47.7%が回答しています。
参考:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/shokibo/b3_2_1.html
しかし、把握できていると回答していても、実際にどの程度把握しているのかは不明です。
実際に、聞いてみたら回答できないことも多々あるはずです。
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自社の強み
経営戦略を立案する際に、自社の強みを生かすというのは定石です。
では、自社の強みを挙げることはできるでしょうか?
できていないこと、欠点はいくらでも挙げることはできるものの、強み、競合に対する比較優位性となると、全然挙げられないといったことはよくあります。
実際に、うちには強みなんてないとおっしゃる経営者様もいらっしゃいます。
しかし、既存の顧客は何らかの理由があって貴社の商品・サービスに対して対価を支払っているはずです。
実際に経営者様自身や従業員の方々は自社を主観で見る……つまり、客観視することは極めて難しいのが事実です。
そのため、顧客から見て魅力に感じていること、優位性に気づくことは難しいでしょう。
思い切って顧客や周囲の人たちに聞いてみても良いかもしれません。
財務状況
売上高や現預金、負債の額は把握されていると思います。
では、損益分岐点売上高はいかがでしょうか?
どういった費用がどれだけ発生しているかはいかがでしょうか?
売上がどれだけ上がるとどれぐらいの利益額になるかは把握されているでしょうか?
財務状況を把握せずに経営を行うのは、計器類を見ないで運転するようなものです。
例えば、タコメーターがない車も存在しますが、タコメーターによって効率の良い運転が可能になり、エンジントラブルにも気づきやすくなります。
燃料系がないとガソリンの残量が分かりませんし、警告ランプがなければ走行不能に陥りかねない重大な異常があっても気づきません。
企業の全てが数字として表れる訳ではありませんが、数字として管理できるものを活用できれば、より効率的な経営や適切な判断を行うことができるようになります。
決算書の説明を税理士から受けるでしょうが、決算書の情報だけでは前述した損益分岐点や、売上がどれだけ上がるとどれぐらいの利益額になるのかは分かりません。
中小企業診断士に依頼して分析してもらっても良いですが、中小企業基盤整備機構が無料で提供している経営自己診断システムをご利用されても良いのではないでしょうか。
従業員のこと
組織が大きくなれば、個々の従業員のことを把握するのは難しくなります。
モチベーションはどうか、従業員の方々は会社に対して、仕事に対してどのように感じているのか、不満があるのか、すれ違いはないかなど、どこまで把握されているでしょうか?
ある程度以上の規模になれば、経営者様が全員の状況を把握する必要はなく、各階層の管理職の仕事になります。
しかし、全体の傾向は掴んでおく必要はあります。
経営資源は一般的にヒト、モノ、カネ、情報と言われますが、ヒトだけは唯一意思を持っています。
従業員の方々にモチベーションを維持して気持ちよく成果を出していただくためには、従業員の方々のことを可能な限り把握する必要があります。
最後に
ご自身の中性脂肪値や尿酸値、血圧などの数値を把握されているのは、病院で調べたからです。
その他、健康診断でポリープが見つかったといった経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。
このように、自分の体であっても専門機関で調べてもらって初めてわかることがたくさんあります。
会社自体には形がありません。
履歴事項証明書で存在していることは証明できますが、会社自体を目で見ることも触ることも、匂いを嗅ぐこともできませんので、目の届かないことや把握しづらいことも多々あります。
例として「自社の強み」「財務状況」「従業員のこと」の3つを挙げさせていただきましたが、実際にどの程度把握していらっしゃるでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。