会社の決算を税理士に依頼するのが一般的です。
その他、就業規則の作成を社会保険労務士に依頼したり、契約書のリーガルチェックを弁護士に依頼したりと、何らかの形で士業と関わっているでしょう。
そういったこともあって、経営上の様々な課題を士業に相談してみようというのもあるかもしれませんが、果たしてそれは正しいのでしょうか?
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士業とは?
士業といってどういったものをイメージされるでしょうか。
一般的に企業に関係するものと言えば、弁護士、弁理士、会計士、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士、そして中小企業診断士といったところでしょうか。
上記に挙げたものの中で中小企業診断士以外は、それぞれ資格ごとに法律に定められた独占業務があります。
言い換えると、何らかの法律の専門家だと言えます。
そして、専門家としての士業の良い面は、専門領域における知識やノウハウを有していることです。
士業なら適切な回答を得られる……とは限りません。
企業の経営において様々な課題がありますが、とても1人の士業で対応できる知識量ではありません。
何らかの経営課題について相談をされて、もし専門外だった時に「自分は専門外なので分かりません」と言ってくれる人は、誠実な対応をしてくれる人です。
課題の達成はできませんが、専門外の知ったかぶりで損益を被ることはありません。
しかし、専門外であるにも関わらず、答える人、答えようとする人もいます。
適切な知識やノウハウに基づいた回答ではありませんので、場合によったら企業側が損害を受けかねません。
理由にもいくつかのパターンが考えられます。
失注したくない
知りません、分かりません、できませんではその後の受注につながらいため、分かっているようにふるまうといったことが考えられます。
売上をもっと上げたい、顧問契約を失いたくないと思っている士業はこういった対応をする可能性が考えられます。
できない、知らないと言いづらい
プライドなのか何なのか、相談や質問をされたことに対して「知らない」「分からない」と答えることに抵抗があるという人もいるでしょう。
士業の中でも年齢の高い人やキャリアの長い人、逆にキャリアが短い人が自分を大きく見せようとしてこういった対応をする可能性が考えらえます。
知らないこと、できないことを分かっていない
相談された経営課題を達成するに当たって、どういう知識やノウハウが必要になるのかを分かっていない、あるいは自分にその能力がないことを分かっていないというケースもあります。
士業は専門領域の法律について深く学んでいますが、逆に言えば経営の全体像については学ばないため、そういったことも多々あります。
士業に相談する危うさ
士業は正解がある世界の人です。
税率、知財の保護期間、時間外の勤務時の割増賃金についてなど、全て法律で決められています。
こういった、明確な正解があることについては士業は大いに頼りになります。
しかし、経営とは答えのない世界です。
売上高が10億円の企業が5年後に売上高12億円を目指す、売上高15億円を目指す、売上高のアップではなく、営業利益率のアップを目指す、いずれも正解です。
そのため、経営ビジョンの設定、それを達成するための経営戦略といったように、答えのないカテゴリにおいての経営判断については、前述の通り正解がありませんので、士業とは非常に相性が悪いです。
間違った相手に相談すると
間違った相手に相談してしまうと、時間の無駄どころか余計なダメージを受けかねません。
事例ですが、ある企業(A社としておきます)が別の企業(B社)から特許権の侵害で訴えられました。
訴えられたということで、弁護士に相談したところ、B社に示談金を払いましょうと言われて示談金を支払ったとのことです。
後日、弁理士にその話をしたところ、実際の特許の申請内容を確認したうえで、特許に抵触していないことが分かったとのことです。
最初から知財のプロである弁理士に相談していたら、A社はB社に対して1円も払わずにすんでいたところ、弁護士(特許権に関しては特に知識がない)に相談してしまったがために、払わなくても良い出費をする羽目になってしまいました。
このように知識がないが故に、自分が知らないことも分かっていないこともありえます。
もちろん弁護士も悪いのですが、A社が弁理士に相談しなかったのが一番の原因です。
中小企業診断士は士業の中の例外
中小企業診断士は経営戦略や組織論、マーケティング、生産管理といった経営の上位からオペレーションまでの知識、IT、中小企業向けの施策といった経営に関する知識を幅広く有していますが、何らかの専門家というようなものではないといった士業の中でも例外的な存在です。
経営に関する幅広い知識を有しているため、公的機関では中小企業診断士が経営相談への一次対応をすることが一般的です。
法律に関わる深い知識を求められても答えられませんが、必要に応じた士業を始めとした専門家を提示してくれます。
最後に
明確に「こういった場合は○○士に相談するのが適切」というのが分かっているのであれば問題はありませんが、誰に相談すべきか分からないのであれば中小企業診断士にご相談ください。
知り合いにいなければ公的機関での無料相談といったことも可能です。
以上、参考になれば幸いです。