補助金の代書事業を手掛けていた北浜グローバル経営株式会社が自己破産しました。
帝国データバンクの記事によると、人員増加、会社の転居に伴う費用の増加に加えて、補助金審査の厳格化による案件の進行遅れで資金繰りが悪化したとあります。
さて、ものづくり補助金が十数年前に出てから、補助金代書業者が雨後の筍のごとく現れ、事業再構築補助金でまさにバブルと言えるような状態でした。
こういった状態がいつまでも続くわけがないのですが、過剰な投資をしたために北浜グローバル経営株式会社は破産という憂き目に遭いました。
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代書業者の破産
国内でコロナウィルスが広がり始めたのが2020年に入ったころです。
2021年3月末から事業再構築補助金の第1回の公募が始まり、北浜グローバル経営株式の2020年3月期の売上高が約2億2000万円、2023年3月期には売上高約35億8500万円とのことですので、ほぼ事業再構築補助金の代書で売上を向上したと考えられます。
事業再構築補助金は、コロナ禍をきっかけに事業再構築を目的とした補助金です。
したがって、コロナ禍が収まれば予算が減額されるか、あるいは補助金自体がなくなるか、仕様が変わるか、いずれにしてもいつまでも同じ状態が続くというのは考えられません。
企業が考えるべきこと
企業が補助金を活用すること自体が悪いということはありません。
しかし、あくまでも、儲かる計画があっての補助金申請です。
設備を導入するにあたって、補助金を活用して少しでも安くできれば、自分たちも代書業者もWin-Winだという発想が失敗のもとです。
補助額の○%の成功報酬っておかしくないですか
代書に対して作業代行としての手間賃を支払うのは分かります。
しかし、採択されたら成功報酬で補助額の○%を支払うといのは妥当でしょうか。
補助額に応じて代書業者の手間が増える訳ではありませんし、本来500万円しか補助が認められないところをネゴをして1,000万円に引き上げたといった訳でもありません。
そもそも、病院がけがを治したら成功報酬を取りますか?
車の修理工場が故障を直したら成功報酬を取りますか?
採択させますといって代書を受託して、成功報酬を要求するのは正当でしょうか?
補助金の目的
補助金申請のそもそもの目的は何でしょうか?
利益が上がる計画があり、その実現の手段として設備投資を行う、つまり補助金をもらうこと自体は利益を上げるための手段ですらありません。 あくまでも、補助金は設備投資に対するサポートです。
そのため、事業を遂行した結果、営業利益が上がらないといけないわけですが、補助金代書業者の売り文句を見てください。
「○件採択されました」「採択率○%です」「○円分の補助金が採択されました」といったように、採択されたこと自体を実績として訴求していて、申請企業が儲かったことをウリにはしていません。
もちろん、代書をしている業者が悪質な業者ばかりとは限りません。
とはいえ、採択自体が目的ではなく、事業によって利益を上げることが目的ですので、採択自体が役に立つと考えている代書業者は、事業者が補助金を申請する本来の目的を勘違いしていると言えます。
いずれにしても、採択されることに対して対価を支払うのではなく、より利益が上がるから対価を支払うはずです。
利益が上がらないのであれば、支払った金額は損になるだけです。
国がすべきこと
補助金そのものが悪いわけではありませんが、申請企業ではなく、代書業が儲かるような補助金のあり方はすぐに見直す必要があります。
いくつかの補助金では、認定支援機関が事業終了までサポートする必要がありますが、それ自体を有料にする代書業者もあります。
ひどい場合だと、認定支援機関も下請けの代書業者も採択後に報酬をもらったら、あとは知らんぷりで支援をしないという事例もあります。
認定支援機関に対しても、悪質なところはどんどん取り消し、再取得できないようにすれば良いのではないでしょうか。
本来、国が業者を脅しつけてちゃんとしろいう必要はないはずです。
しかし、補助金については申請事業者側も、代書業者側もタガが外れて、感覚が麻痺してしまっているのではないかと思えます。
そのため、補助金に関しては性善説ではいかないように思います。
そもそも認定支援機関という大仰が名前がついていますが、士業を3年やっていればなれるものであって、特別なスキルや能力がある訳ではありません。
認定支援機関でないとできないというのを見直すか、あるいは認定支援機関制度自体をなくしてしまっても差支えがないでしょう。
いずれにしても、税金を使用するわけですから、成果に結びつかないようなやり方は、速やかに変更すべきです。
新たな懸念
事業再構築補助金が出る前、ものづくり補助金の時から、補助金の成果は疑問視されていました。
実際に、事業再構築補助金は、代行手数料、採択された成功報酬目当てのひどい申請内容が多いがために、採択基準が厳しくなるといった仕様変更がありました。
今年度以降は事業再構築補助金に限らず、様々な補助金で審査が厳しくなるでしょう。
そもそも、税金が原資である以上は、そうあるべきです。
補助金の代書で売上を上げていた業者はこれから冬の時代が来ると考えられます。
おそらく、倒産・破産とまではいかなくても、経営が苦しくなる補助金代書業者は増えることが見込まれます。
前出の北浜グローバル経営株式会社は、代書業者の中でも企業規模がそれなりに大きかったので一般的なニュースにも取り上げられていますが、もっと小規模な代書業者、士業なら破産、倒産しても一般のニュースでは取り上げられないでしょう。
ただ、代書業者の経営状態が悪くなること自体が問題なのではありません。
法外で高額な報酬を請求していた代書業者が、次のターゲットを探して、新たな価値の低い高額なサービスを提供しようとすることです。
最後に
決して北浜グローバル経営株式会社を上げつらう意図があるわけではありません。
3年間で2億2,000万円から35億8500万円に売上高を向上させたにも関わらず、破産してしまったというインパクトから例に出させていただきました。
さて、世にはびこる補助金代書業者は、補助金バブルがはじけた後、鵜の目鷹の目で新たなターゲットを探すことになるでしょう。
経営者の皆様におかれましては、補助金がなくなって食い詰めた元代書業者に引っかからないようご注意ください。
以上、参考になれば幸いです。