外部環境は常に変化しており、中小企業に限らず全ての企業はその影響を受けます。
景気が良い時に売れる商品、景気が悪い時に売れる商品といったように、景気によって商品の売れ行きが変わるというのはイメージしやすいでしょう。
PEST分析におけるEconomy(経済動向)を分析するにあたって、代表的な指標であるGDPについて取り上げたいと思います。
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GDPとは
国の経済活動状況を示す指標としてGDPがあります。 一定期間内に国内で生産された付加価値の合計額であり、国や自治体による公的出費、個人の消費、企業の投資、輸出入の差益で構成されています。
さて、2024年2月にGDPでドイツに抜かれたと様々なメディアが報じました。
参考:(日経新聞)名目GDP、ドイツに抜かれ4位 23年4兆2106億ドル
「GDP」の前に「名目」とついているのにお気づきでしょうか。
GDPには名目GDPと実質GDPの2種類があります。
2種類のGDP
名目GDPは実際に取引されている価格に基づいて推計される数値です。 それに対して実質GDPは基準年の価格を基準として物価変動の影響を取り除いて推計されます。
つまり、物価が上がると名目GDPもそれに伴って上がります。 コロナ禍の影響によってエネルギーコストをはじめとした各種コストが上がったことは記憶に新しいですが、日本とドイツのガソリン価格の変化を見てください。 「10Y」を選択していただくと、コロナ前からのガソリン価格の動きが分かります。
参考:(Trading Economics)ドイツ – ガソリン価格
参考:(Trading Economics)日本 – ガソリン価格
政府による施策によって、我が国は諸外国のようにガソリン価格が高騰せずにすみました。
逆に言えば、国民や事業者の支出がドイツほど上がらずに済んだためにガソリン価格の影響による名目GDPの上昇もドイツよりも緩やかであると言えます。
また、IMF(国際通貨基金)による報告は米ドルがベースですので、名目GDPは為替相場による影響を受けます。
そのため、名目GDPだけでは実態が分かりづらいと言えます。
メディアの報道
なぜ、メディアは実質GDPと名目GDPの両方ではなく名目GDPだけを取り上げるのかといえば、おそらくセンセーショナルに伝えられるからだと考えられます。
IMFによると、今後の先進国の成長率は緩やかで、特に目を引くような記事を書くことは難しいでしょう。
それでも記事を書いて紙面を埋める、テレビであれば時間を埋めるとなれば、都合の良い数字を持ってくることになります。
必然的に悪く見せかけられる数字の方が、ネタとして取り扱いやすいでしょう。
最後に
11月に行われた先のアメリカ大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が大統領に選出されました。 実際の就任は2025年1月20日になりますが、トランプ氏はドル安を志向していますので、円とドルの為替相場にも何らかの影響があるかもしれません。
円とドルの為替相場の動きは仕入れ・販売、インバウンド需要など、業種を問わず様々な影響があり、それがGDPに影響を与えます。
メディアの恣意的な報道を真に受けても経営にとってプラスはありません。
適切に一次ソースを確認して、適切な舵取りをしていきましょう。
なお、GDPについてはIMF(国際通貨基金)のWebサイトをご参照ください。
参考:IMF
以上、参考になれば幸いです。