
大阪城を建てたのは誰でしょうか?
豊臣秀吉と答えるのが一般的でしょうが、ひねくれた人なら大工さんと答えるかもしれません。
「建てた」という言葉の解釈を「石山本願寺跡地に城を建てることを決定し、実行した」というのであれば、大阪城を建てたのは豊臣秀吉であるという回答になるでしょう。
「築城のための実作業をした」と解釈したら大工さんといっても間違いではないでしょう。
同じ「建てた」という単語でも、解釈によって捉え方は変わります。
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紛らわしい言葉
対応する、展開する、コーディネートする、フォローする、検討する、こういった言葉は意味するところが広く、状況や文脈、共通している認識の種類や幅によって受け取り方が変わります。
この受け取り方の違いがビジネス上の齟齬を起こす可能性があります。
例えばクレームがあったとします。
クレームがあった報告に対して「対応する」よう指示したとします。
この「対応」は具体的に、いつまでに何をどうすることでしょうか?
クレームをしてきた相手に対して、謝罪をする、保証をするといった必要に応じた行動を取ることは必要です。
その他、クレームがあったことを社内で共有する、再発防止策を検討する、検討した内容を全社的に共有する……といったように、その後の行動はいろいろ考えられます。
いつまでに何をどこまで行うのか「対応」の一言で共有できるでしょうか。
日常的によく起こることで、いつも通りの処理をすれば良いということであれば「対応」の一言でも良いかもしれません。
これが、「今回は再発防止策まで検討してほしい」ということであれば、いつも通りの「対応」では済まないため、その旨伝える必要があります。
言葉のあいまいさが生む齟齬の例
言葉の定義が双方で違った場合、様々な齟齬が生まれます。
例えば、顧客を「フォローする」といった場合、何をどこまで行わなくてはいけないと考えるでしょうか。
販売後の顧客とのやりとりをするだけなのか、さらに新たな提案を行うということなのか分かりません。
このように、責任範囲が不明確であり、タスク実行の障害にもなりかねません。
他には、「検討する」という言葉は使用する文脈によって、ポジティブとネガティブの両方の意味を含む場合があります。
「資料を送ってほしい」「再来週にお話ししましょう」といったように、次のステップに進むための具体的な話があれば、「検討する」はポジティブな意味の可能性が高いでしょう。
しかし、体の良い断りの文句に使われることも多い言葉です。
「また改めてご連絡します」と言われるようでしたら、実際は検討はしないと考えても良いでしょう。
定義があいまいな言葉を用いたコミュニケーションによって、以下のような影響が起こりえます。
- コミュニケーションがうまく取れなかったことによる生産性の低下
- 相手の期待を満たせずに信頼を失う
- 事業自体への悪影響による経済的な損失
齟齬を減らすための取組み
指示や報告の際に5W1Hを意識すれば齟齬は減ります。
加えて、組織が変われば同じ単語であっても、指し示すことや意味するところも変わる可能性があるという点にも留意が必要です。
そもそも齟齬が起こる原因は、説明をしなくても相手が自分と同じイメージを共有してくれるだろうという過信が原因だと考えられます。
必要に応じて適宜確認をする、ちゃんと伝わったか言葉を変えて説明をする(あるいは、説明を求める)といったように、再度確認することも有用でしょう。
最後に
直接の対話であれば、相手の反応を確認しながら言葉を選ぶこともできますし、聞き手も文脈を掴みやすいかもしれません。
しかし、IT化が進むにつれて、メールやチャットのような直接の対話を伴わないコミュニケーションの割合が増えています。
そこで、改めて言葉の定義があいまいになりがちな言葉は、定義を明確化することで、ビジネスの効率と信頼を高めましょう。
以上、参考になれば幸いです。