経営における各種のフレームワークは、経営者にとってのツールといえるでしょう。
その道具を効率的に活用するためには、その特徴を把握する必要があります。
今回はVRIO分析について、考えていきたいと思います。
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VRIO分析とは
一般的に、企業の経営資源は、以下のように言われています。
ヒト(人的資源)
モノ(物的資源)
カネ(資金)
情報(ノウハウのような無形資源)
これらの経営資源が、競争優位の源泉になりうるか、競争優位の持続性があるかを判断するためのフレームワークです。
以前「経営学を考える(SWOT分析・クロスSWOT)」において、競合と比較して、優位な点が強み、劣位な点が弱みだと述べました。
例えば、微細な金属の曲げ加工に関する高いスキルを備えていたとしても、競合も同程度のスキルを備えていた場合は、比較優位性になりません。
もし、競合が自社よりも高い曲げ加工スキルを備えていた場合は、比較劣位になってしまいます。
また、持続優位性を有していたとしても、今後も維持できるとは限りません。
VRIO分析は、比較優位性の有無だけでなく、比較優位性の持続性についても検討することができるフレームワークになっています。
VRIO分析の4つの項目
それぞれ4つの項目について見ていきましょう。
Value(経済価値)
自社が保有する経営資源が、経済価値を有するかどうか……言い換えると、売上に繋がるものかどうかということです。
例えば、商品として提供できないレベルのラーメンしか作れないのであれば、ラーメン店を開いても事業になりませんね。
Rarity(希少性)
保有する経営資源がどれだけ独自性があるか、競合ができないことなのかということです。いくら得意なことであっても、誰でもできるようなことなら相対的に見て強みにはなりません。
むしろ、コモディティ化しているということになりますので、競争優位の源泉にはなりにくいです。
Imitability(模倣可能性)
どれだけ真似されにくいかということです。
仮に希少性があったとしても、競合が簡単に真似できるのであれば、やはり競争優位の源泉になりにくいと言えます。
例えば、強みの源泉が特定の設備を持っていることであれば、競合が同じ設備を導入すれば、競合も同じ強みを備えることになります。
強みの源泉が組織的の持つ無形資源のように、外部からでは分かりづらい場合、あるいは複雑に事象が絡み合って成り立っているほど模倣困難性は高まります。
Organization(組織)
経営資源を有効に活用できる組織であるかどうかです。
経済価値、希少性、模倣困難性の3つとも満たす能力やスキルがあったとしても、実行できる体制が整っていなければ経営資源を効率的に活用できません。
VRIO分析の手順
VRIO分析を行うにあたっては、V(経済価値)⇒R(希少性)⇒I(模倣困難性)⇒O組織の順番で分析します。
経済価値がなければ競争劣位の状態ですので、そのままでは事業としてやっていくのは難しいでしょう。
経済価値はあるが希少性が低ければ競争優位の源泉にならず、コモディティ化の危険性があります。
経済価値と希少性があれば一時的な競争優位性を備えていることになります。
さらに模倣困難性と組織が備わっていれば持続的な競争優位性を持つ可能性が高いと言えます。
以上をまとめると以下の通りになります。○がそれぞれ価値を有している、×は有していないことを表しています。
V (経済価値) |
R (希少性) |
I (模倣困難性) |
O (組織) |
競争優位性の 状態 |
---|---|---|---|---|
× | 競争劣位 | |||
○ | × | なし | ||
○ | ○ | × | 一時的 | |
○ | ○ | ○ | ○ | 持続的 |
最後に
競争を避けること、自社に強みを生かすことは、企業規模を問いません。
特に経営資源に乏しい中小企業であれば、強く意識する必要があります。
現状のみならず、今後の持続優位性があるかどうか、VRIO分析を活用されてはいかがでしょうか。