経営者の学び

戦国時代は多くの大名がしのぎを削っていた時代です。
領土を拡大した大名もいれば、失った大名もいます。
では、領土を拡大した大名と、減らした大名、失った大名の違いは何でしょうか?

地の利や時の運という要素も否定できないでしょう。
しかし、本人の能力の影響が大きいと考える方が多いのではないでしょうか。

企業で例えると、会社の業績を伸ばせるか、どこまで伸ばせるのかは、経営者の方々の能力のに該当します。
では、普段からどれだけ能力を向上させるために努めているでしょうか。

経営者の学びの必要性

例えば飲食店のオーナーシェフになるのであれば、料理の能力だけでなく、経営に関する能力も求められるはずです。
しかし、起業、あるいは事業承継をするにあたって、職業能力は重視していても、経営の勉強を重視しないケースが多いのではないでしょうか。

経営に関する知識がないままに経営者になったのであれば、経営者になった後に必要な知識を学ぶ必要があります。
また、実際に経営をしていく中で、経験や既存の知識だけではどうにもならない壁に突き当たることもあります。

そのため、経営者は常に学びが求められます。

経営者にとっての実学とは

職位によって求められるスキルが異なるというのは、以前カッツモデルをご紹介した際にお伝えしました。

実際には、会社規模によっては経営トップであっても現場の仕事をしなくていけないこともありますので、企業によってどういったスキルが求められるのかは異なります。

しかし、経営者という立場である以上はコンセプチュアルスキルが求められるのは間違いありません。

例えば、現場の問題解決能力というよりも、問題を作り出す能力が求められます。
これは、決してトラブルを発生させるということではありません。
問題とは現状とありたい姿のギャップのことを指しますので、より良い姿を設定する能力と言い換えることができます。

加えて、経営者ですから、会社の運営、事業の遂行、組織の運営といった会社の経営に関する知識も学ぶ必要があるでしょう。
具体的には、経営戦略、マーケティング、会計、組織論といったことが挙げられます。

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルは、知識や職業能力ではなく、概念化能力ともいわれています。
経営という正解がない世界において、物事の正誤や是非の判断をする、複数の選択肢から適切に選択する、複雑な問題を整理して解決策を導き出すといった、経営判断や業務上の判断力、思考力といったところです。

経営者としての判断や考えが、1年後、5年後、10年後の会社の将来を決めるわけですから、非常に重要なスキルです。

  • 論理的思考(ロジカルシンキング)
  • 水平思考(ラテラルシンキング)
  • 批判的思考(カウンターシンキング)
  • ものごとを多面的・多角的に捉え、考える力
  • 俯瞰してものごとを捉え、考える力

といったことなどが挙げられます。

経営に関する知識

知識は多いに越したことはありませんが、日々多忙な中で学ぶとなると強弱をつける必要があります。
これは知っておくと良いと思われるものをご紹介します。
なお、ご紹介する順番は、特に優先順位や重要度という訳ではありません。

経営戦略

経営戦略を簡単に表現すると、環境の変化に対応しながら、経営資源をどのように生かし、誰に何をどのように提供していく方策となるでしょう。

経営戦略が妥当でなければ、実際に行う施策の効果は意味を成しません。
言い換えると、売れない商品を作って売っているのであれば、どのようなプロモーション手段を講じようが、業務効率を改善しようが、売上には繋がらないということです。

マーケティング

事業を行う以上、売上をいかに上げていくのかという点を避けることはできません。
市場の状況(規模・ニーズ・今後の動向・競合)に対応しながら売上を上げていくに当たっての仕組みづくりや活動全般がマーケティングといえます。

なんでも教科書通りに行く訳ではありませんが、理想の型を知っているのといないのとでは、おのずと結果に違いが出るはずです。

会計

経営と数字は切っても切れません。
企業と経営の全てか数字に表れる訳ではありませんが、数字として表れるものがあることも事実です。

経営にまつわる数字の読み方を身につけて財務状況を把握すること、数字を実際の意思決定に活用するための知識を身につけることで、KKD(経験・勘・度胸)で行っていた経営判断に根拠が生まれます。
また、定量的な指針ができますので、施策の実行の確度も向上します。

組織論

働く方々の心身の満足度や安全性、効率的に成果を出すために、組織の構成や組織管理について研究している学問が組織論です。

企業のもつ経営資源としてヒト、モノ、カネ、情報(無形資源)が挙げられます。
その内、ヒトだけは意思を持ち、組織環境によっては1+1が2を超えることもあれば、2に満たないことにもなりえます。

組織の規模が大きくなるほど、組織について検討することが増えますので、組織論の重要性が増すはずです。

法律

法律を学ぶ目的は自分で契約書を作成する、自分で就業規則を作るといったことができるようになるためではありません。
企業としてのコンプライアンスの順守や適切なコーポレートガバナンスのために、専門家に相談するにしても、何が法律で定められているか把握する必要があるからです。

そのため、経営者として知っておきたい法律も、経営に関するごく一部の法律で、専門家のように深い知識は不要です。
具体的に挙げると、ITパスポートで個人情報保護法、労働基準法、知的財産権といった経営に関係するいくつかの法律について浅いところが出題されますが、その程度は知っておいた方が良いと考えられます。

学び方

コンセプチュアルスキルに挙げたそれぞれに関すること、経営に関するスキルについては、特に多数の書籍が販売されていますので、書籍に頼るのが良いと考えられます。

特に前述したITパスポートはその名の通りIT寄りではありますが、経営や財務、法律に関して、非常に浅いところですが出題範囲になっています。
経営や財務に関しては多くの書籍がありますので、最初に概要を掴む意味でもITパスポートにトライされても良いかもしれません。

さらに上を目指すのであれば、中小企業診断士試験もあります。
ただし、ITパスポートと比較すると難易度は大幅に上がります。

ただし、費用対効果も考慮する必要があります。
自ら学ぶにしても、何をどこまで学ぶことが会社にとって利益になるのか、どこからは外部の専門家を頼った方が良いのか考慮する必要があります。

最後に

実学であっても、学問はあくまでも学問であり、実務や実践は教科書通りにはいきません。
しかし、繰り返しになりますが経験や既存の知識だけではどうにもならないこともあります。

そういった場合であっても、17世紀のイギリスの哲学者であるフランシス・ベーコンが「知識が力なり」と述べたように、知識があれば解決できることもありえます。

いずれにしても間違いなく言えることは、経営者にとって学びは終わりがないもののだということです。

以上、参考になれば幸いです。

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