NOイノベーション

「イノベーション」という単語はバズワードになってしまい、(技術的な)革新として捉えている人もいれば、新しい価値といったような捉え方をしている方もいるでしょう。
いずれにしても肯定的な意味で捉えられ、なんとなく良いもの、目指すべきものといったイメージになってないでしょうか。
しかし、果たしてイノベーションとはどの企業も目指すべきものなのでしょうか。

売れるかどうかと関係がない

価格、チャネル、プロモーションが適切であったとしても、商品・サービスが革新的であることと売れることとはイコールではありません。
何かを購入したことを思い出していただくと分かると思いますが、必ずしも革新的だから欲しくなった訳ではないはずです。

新規に登場した商品・サービスに対する反応は人それぞれで、スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャースによって提唱されたイノベーター理論によると、以下の5つに分類されます。

  1. イノベーター(Innovators)…革新者
  2. アーリーアダプター(Early Adopters)…初期採用層
  3. アーリーマジョリティ(Early Majority)…前期追随層
  4. レイトマジョリティ(Late Majority)…後期追随層
  5. ラガード(Laggards)…遅滞層

イノベーターが最も数が少なく、次いでアーリーアダプターとなり、アーリーマジョリティやレイトマジョリティが最も人数が多いことが一般的でしょう。

アメリカの経営コンサルタントであるジェフリー・ムーアによると、アーリーアダプターとアーリーマジョリティーとの間には溝(キャズム)があり、この溝を超えることが最も難しいとしています。

つまり、どのような商品・サービスも、ごく一部のマニアには受け入れられただけで終わってしまった、といったように広まる前に市場から消える可能性が高いと言えるでしょう。

利益が得られるとは限らない

前述したように、商品・サービスがローンチしてから、時間の経過とともにそれぞれの段階を経て売れていきます。
購買者がイノベーターやアーリーアダプターの段階では、開発や販売促進のコストを回収するのも難しいかもしれません。

アーリーマジョリティやレイトマジョリティが購入するようになって開発、販売にかかったコストを回収し黒字化するというのが一般的ではないでしょうか。
つまり、キャズムを超えることができなければ、利益が得られないということになります。

また、イノベーションは未来永劫の独自性を保証していない、つまりどのようなイノベーティブな商品・サービスであっても、模倣されないとは限らないといいうことです。

イノベーティブな商品・サービスを市場展開した後に、より大きな経営資源を持つ企業に模倣され、より安価なコストで提供されると、市場を奪われてしまいかねません。

イノベーションはあくまでも手段

イノベーティブであるが1億円の売上が得られる商品と、枯れた技術の商品ではあるが10億円の売上を得られる商品と、どちらが良いでしょうか?

そもそも、イノベーション自体が目的ではなく、新たな付加価値の提供、既存のものよりも付加価値が高い、あるいは同じ付加価値をより安価に、より容易に提供するための手段です。

イノベーションをしたいと思って商品・サービスを開発するのではなく、結果としてイノベーティブな商品・サービスだったということなはずです。

また、今後のことを考えて、技術力を高めるために採算は度外視してでもイノベーションに挑戦したいという場合であっても、イノベーション自体は目的ではありません。

最後に

イノベーティブな企業と言われてどこを思い浮かべるでしょうか?
そして、その企業はシェア1位なのでしょうか?
逆に業界1位の企業はイノベーティブなのでしょうか?

イノベーションそのものを否定するつもりはありません。
しかし、前述したように「イノベーションとは良い物、目指すべきこと」という前提にした理論や文章を散見します。

イノベーションを起こすことができれば、成長できるのでしょうか?
貴社にとって必要なことはイノベーションでしょうか?

経営に関するご相談、お問い合わせなど、お気軽にご連絡ください。

CONTACT